大切なもの


「ねぇ…、ガウリイ……」
あたしは、ガウリイの泊まってる部屋に入って言った。
「ん?なんだ、リナ」
ガウリイはいつもと変わらない、やさしい口調、そしていつもの笑顔。
…けど、あたしは…ちがっていた。
この、どこにも流せない…あふれでるこの思いが心を支配していた。
「どーした?リナ。顔、赤いぞ」
わかってる。自分でもはっきりと。
あたしは顔を下にそむけた。
「リナ、なんか相談したいことがあるんだったら言えよ。
 絶対に、楽になるぜ。言ったほうが」
〜〜!!
「だ、だれのせいで、誰のせいで顔が赤くなってると、思っているのよ!」
「…オレの…せいか?」
「あったりまえでしょ!!」
あたしは言った。
「じゃあ、聞きますけど、あたしのお昼のおべんと、『スタミナガーリック弁』は
 どこへいったと言うのかしらぁ?」
「っ、あ、あれは…あのときに襲ってきたゴブリンにとられちゃったんだよ。」
「いーえ、そんなはずはないわ。あのゴブリンたちは『地精道』で落としたわ。
 そのときにちゃんと確認したの。『あたしのおべんと、持っている子は、助けて
 あげるわ』って」
…まったく…
そのとき、穴に落ちたゴブリンたちは誰ひとりおべんとを持っていなかった。
じゃあ、どこに…。答は…。
あたしは話しているうちに頭に血が上ってきた。いや、すでにのぼっていた。そのせいで顔が赤かったのだ。
せーっかく、わざわざ高い金払って買ったお弁当なのにぃ〜!!
「…リナ」
ぽんっ、と肩をたたくガウリイ。
「ものごとにはガマンしなくちゃ、いけない事だって、あるんだぜ」
っんな!?
あたしが反論しようとした時、ガウリイの顔が近づいてきた。
「もーすこし、考えを大人にしなくちゃな」
ガウリイはあたしの目をじーっと見つめる。
ガウリイ…
あたしは思わず、顔を赤らめる。さっきとはちがう、赤色に…。
「リナ…」
ガウリイの息がふっ、っとあたしの顔にかかる。
…ん?
「…ガウリイ…
 …爆裂陣!!」

どごぐごぉぉおおぉぉぉんんん……

「うどろあへぇええぇぇぇぇ……」
キラーン
「ふ、息が『ニンニク』臭かったのよ!
 この天下の美少女大魔道士、リナ=インバース様からおべんとをとるなんて!
 たとえ神や、魔王が許そうとも!!このあたしがゆるさないわ!!!」
いつか言ったよーなセリフを言うわたし。
ふーっ、まぁったく…。変なこと思っちゃったじゃない。
あたしはガウリイの泊まる部屋だった所を出た。



次の日の朝、あたしたちは宿屋のおじさんに部屋壊し賃をべんしょー(ガウリイが悪いんだからね!)して、早々と宿を出た。
「リナ、ほんとだぞ。オレ、リナのべんとー食ってないぞ」
…まーだ言ってる…。
あたしはガウリイを無視して先に行く。
「オレ、自分の分のべんとーしか食ってないぞ」
……え?
「じ、自分の分って… ガウリイ、持っていたの?『スタミナガーリック弁』…」
「持ってたぞ。リナがゴブリンになんか言ってるすきに全部食ってたけど」
…………。
そー言えば、落とし穴に落ちていたゴブリンの数が少なかったよーな…。
「…あ〜ら、じゃあ、やっぱり犯人は昨日のゴブリンだったのかしら?」
「…おい…リナ…じゃあ、オレは昨日…」
「きゃ〜、おこらないで〜、ゆるしてぇ〜〜…」
言いつつ逃げるあたし。
「こ、こらー!まてー!にげるなー!おーい!リナー!!」
そのあとを追うガウリイ。
あたしとガウリイの旅は…ずーっと続く…(たぶん)。



おわり